二重国籍のままでも問題ない?
2022,03,29
こんにちは。
申請取次行政書士の伊藤亜美です。
二重国籍について書いたこちらの記事 「日本でも二重国籍、実は認められている?」を大変多くの方に読んでいただいています。ありがとうございます。アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、外国籍を自分で取得したことによって二重国籍の状態になっている方からお問い合わせをたくさんいただきますので、よくいただく質問に対して書きたいと思います。
目次
二重国籍になるケース
実際に二重国籍になるケースとしては
- 国際結婚の子供など、未成年のうちに複数の国籍を取得
- 日本人が国際結婚などで自動的に相手の国の国籍を取得
- 外国人が日本国籍に帰化
- 日本人が意図的に外国籍を取得
等があります。
このまま二重国籍を維持できますか?
一番よくお問い合わせをいただくのが4のケースで二重国籍になった方からです。このまま両方の国籍・パスポートを維持したい、二重国籍になっていることが日本に把握されてしまった時にどうなるのか心配などのご相談です。
結論から申し上げますと、このケースの方々は厳密には二重国籍にはなれません。
国籍法第11条
日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う
2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選択したときは、日本の国籍を失う
現在の日本の法律上、国籍法第11条により外国籍を自ら取得したと同時に日本の国籍は自動的に失います。つまり、例えば自分の意志でアメリカ国籍を取得た場合、日本のパスポートや戸籍を持っていても日本の国籍を喪失し、法的にはその方は二重国籍ではなくアメリカ国籍になっています。
一方で、法務省の方とも何度かお話しているのですが、現状では日本人の方が外国籍を取得しても、一部の国を除き、日本に連絡は来ないため把握はしていないそうです。二重国籍になっていることが日本側に自動的にわかることは少ないようです。ですから自分で手続きをしない限りは日本のパスポートを持っていることも物理的には可能ですし、日本に戸籍もそのまま残っているという状態になります。
ただし、日本のパスポート更新の手続きの中で、「外国の国籍を持っていないか」という質問があるため、そこで「いいえ」と答えれば虚偽申請になりますし、外国籍を取得した事実を伏せて日本のパスポートを取得した場合には、旅券法第23条1項により「5年以下の懲役、または300万円以下の罰金またはその両方」に処せれられる可能性があります。
また、戸籍だけを見るとあたかも日本国籍があるかのように扱われ、戸籍謄本などが取れたりしますが、日本国籍喪失手続きをしていないから戸籍が残っているだけで、日本国籍があるということではありません。
旅券法
第二十三条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 この法律に基づく申請又は請求に関する書類に虚偽の記載をすることその他不正の行為によつて当該申請又は請求に係る旅券又は渡航書の交付を受けた者
では、どうすればいいですか? 手続きについて
「自分の意志で外国籍を取得したけれど、老後は日本で日本人として生活したい」というご相談や、「外国籍の方と結婚したときに外国籍を取得したけれど、日本国籍に戻したい」というご相談もよくいただきます。その場合、法的に正しい手続きは現在持っている外国籍によっても変わってきますが、原則として
- 外国人として日本に入国するビザを申請するために国籍喪失届を提出し
- 外国人として日本に入国
- 日本に帰化申請(再帰化)をすることによって、日本の国籍を再度取得
- 外国籍を放棄する
という手続きになります。
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未成年の二重国籍者の国籍選択の時期は?
また、ケース1のように国際結婚で生まれた子供など、未成年のうちに複数の国籍を取得した場合、成年年齢の引下げ等を内容とする民法改正により国籍選択の時期が2022年4月1日より変更になります。
国籍の選択をすべき期限(国籍法第14条第1項)
- 平成14年(2002年)4月1日以前に生まれ、令和4年(2022年)4月1日時点で重国籍の方→ 重国籍となった時が20歳未満であるときは22歳に達するまで、重国籍となった時が20歳以上であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択し、国籍の選択の届出
- 平成14年(2002年)4月2日から平成16年(2004年)4月1日までに生まれ、令和4年(2022年)4月1日時点で重国籍の方
→ 令和6年(2024年)3月31日までにいずれかの国籍を選択し、国籍の選択の届出 - 平成16年(2004年)4月2日以降に生まれた重国籍の方
→ 重国籍となった時が18歳未満であるときは20歳に達するまで、重国籍となった時が18歳以上であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択
上記の通り、これまでは20歳に達する以前に重国籍となった場合は22歳に達するまで、20歳に達した後に重国籍となった場合は 重国籍となった時から2年以内 に国籍選択の必要がありましたが、民法改正に伴い、重国籍となった時が18歳未満であるときは20歳に達するまで、重国籍となった時が18歳以上であるときはその時から2年以内に、いずれかの国籍を選択に変更になります。経過措置として、平成14年(2002年)4月2日から平成16年(2004年)4月1日までに生まれ、令和4年(2022年)4月1日時点で重国籍の方は令和6年(2024年)3月31日までにいずれかの国籍を選択し、国籍の選択の届出をする必要があります。
このケースの方々は帰化申請の必要はありません。
まとめ
新型コロナの影響により現在も観光目的での日本への入国はできなくなっています。米国移民国籍法では一部の例外を除いて、アメリカ人はアメリカへの出入国の際にはアメリカのパスポートを使用しなければならないことになっています。その結果、アメリカ国籍を取得した方は、親の介護などの私的な理由での日本への入国が難しい状況が今も続いています。この状況がいつ改善されるかわかりませんが、このようなこともありアメリカ国籍を手放し日本国籍を再取得したいというご相談もいただいています。
国際的な流れを踏まえますと、今後、日本も重国籍を認める可能性はあると思いますし、個人的にはそうなるといいなと思いますが、現状はこれまでご説明した通りです。
日本国籍の再取得をお考えの方、または永住者として日本に戻ることをお考えの方、当事務所へご相談ください。
Amie国際行政書士事務所では、帰化申請や永住許可申請のお手伝いの経験と、私自身の海外に住んでいた経験を活かし、お客様に寄り添いながら親身に再帰化や永住申請のサポートをさせていただいています。Zoomでの面談も実施しておりますので、海外在住の方も是非お問い合わせください。
プロフィール
伊藤亜美
・東京都出身
・高校時代をイギリスで過ごし、現地校を卒業
・上智大学外国語学部英語学科で主に異文化コミュニケーションを学ぶ
・卒業後はメーカーの海外部門に11年間勤務
・高校生に英語を10年以上指導 TOEIC 970点 国連英検A級
・千葉県行政書士会・国際業務部部員
・金融庁の 「外国語対応可能な士業のリスト(行政書士)千葉県」 にも正式に登録されています。
海外で生活したことで、異なる文化の中で生活・仕事をする大変さを知り、日本で勉強したい・働きたい外国人や、外国人を雇いたい企業様のお役にたちたいと思い、行政書士の資格を取りました。
人と話すこと、話を聞くことが好きです。丁寧にお客様の状況をヒアリングし、法律の知識を活かして、最良な方法をご提案いたします。また、お客様とのコミュニケーションを丁寧にすることで、お客様が不安を抱くことがないように心がけています。
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