帰化申請で不許可になりやすい事例
2021,01,10
遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
行政書士の伊藤亜美です。
今年も少なくとも前半はコロナウィルスの影響を受けながらの生活になりそうですが、感染しないよう極力気を付けながら仕事をしていきたいと思います。読んでくださっている皆様も、どうぞ健康に気をつけてお過ごしください。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さっそくですが、帰化申請の審査において、不許可になりやすい事例についてわかりやすく解説していきたいと思います。
帰化申請の要件についてはこちら 帰化が認められる条件とは?
住所要件の“引き続き5年”を満たしていない
帰化の条件の一つである住所要件に国籍法第5条第1項第1号の“引き続き5年以上日本に住所を有すること”があります。この“引き続き”について、海外出張の多い方などからご質問をいただくことがあります。
実務上、出国期間が3ヶ月以上になると“引き続き”とは認められず、日本に住所を有する期間がリセットされて(ゼロに戻される)しまう可能性があります。また、1年間の出国日数が合計半年を超えると、同様に期間がリセットされる可能性が高くなります。
海外出張の多い方や、出産などで母国に長く帰国した方は注意が必要です。
ただし出国日数の基準を満たしていないからといって、必ずしも不許可になるわけではありません。その理由・頻度・期間が相当であることを理由書などで説明することによって許可される可能性もあります。認められる可能性があるケースでは、母国や海外にいる親が病気などになり、周りに面倒を見ることができる親族がなく、申請人本人が看病・付き添いをする以外方法がないというような場合など、人道的に見て期間をリセットすることで本人に大きな不利益になることが相応しくないと判断された場合などかなり限定的です。
住民税の支払いに問題がある(生計要件)
会社員の方などは給与明細を確認して、住民税が天引きされていれば問題ありません。
注意が必要なのは、会社から住民税を天引きされていない場合です。その場合、自分で申告して支払う必要があります。この場合も手続きを行い、住民税を払っていればもちろん問題はありません。もし払っていことが判明した場合は、遡って住民税を完納すれば、帰化申請の提出書類である納税証明書にも未納税額はでてこないので申請前に完納しましょう。
また、結婚している方が帰化申請をする場合、帰化申請するのが本人だけでも配偶者の納税証明書を提出します。そのため本人に未納がなくても、配偶者が滞納している場合、審査が通らないので注意が必要です。
さらに、「扶養」の項目に関しても注意が必要です。例えば、配偶者を扶養に入れている場合で、配偶者がアルバイトなどをしている場合、年収が103万円以上になったときには扶養に入れることができません。扶養に入ったままになっている場合、住民税を少なく払っていることになるので、修正申告が必要になります。この場合も、申請前に修正申告をして税金を払えば審査に影響ありません。
母国にいる両親や祖父母、さらには兄弟姉妹も扶養にいれている方もいますが、適切な扶養基準に従って扶養に入れている場合は税法上は問題ありません。しかし、中には両親が本国で働いているにも関わらず、納税額を減らすために扶養に入れているようなケースもあるようです。法務局は扶養控除についても厳しく審査しているので、本当に扶養している証拠を求められるケースが多いようです。もし扶養控除のために扶養人数を増やしているような方は、すぐに修正申告をして正しく税金を納めることをお勧めします。
転職した・仕事を辞めた(生計要件)
「転職をしたばかりなのですが、帰化の審査に影響ありますか?」という相談を受けることがあります。転職は生計要件に関係するので、影響はあります。
「安定的かつ継続的に一定額以上の収入を長期に渡って得ることができるか」が審査の際に見られますので、転職の回数や理由よって、今後も安定的かつ継続的に収入を得ることができるかを判断されます。例えばキャリアアップを目的に転職を繰り返しているような場合については、安定的かつ継続的に収入を得ることができると判断される可能性が高く問題ありませんが、単に仕事が嫌で転職を繰り返している場合などは、否定的な判断がされる可能性があります。
また転職を考えている方から、「申請前と申請後のどちらに転職した方が影響が少ないですか?」と相談を受けることもありますが、どちらでも同じです。申請後に転職した場合でも転職先企業の資料を提出することになりますし、その内容によって許可・不許可が判断されます。一般的に審査期間中に転職した場合は審査期間が長くなります。
また帰化申請中に仕事を辞めた場合、審査にマイナスになることもあるので要注意です。
最後に
帰化の審査は厳しくなる傾向にあり、不許可率も2015年以降、5%を上回っています。(出典:法務省 帰化許可申請者数,帰化許可者数及び帰化不許可者数の推移)
上記のケース以外にも、帰化申請者本人には問題がなかったが同居の親族に犯罪歴があった、同居の親族の経営する会社が厚生年金に加入していなかった、収入よりクレジットカードの引き落とし額が大きく生計要件を満たしていなかったなど、さまざまな不許可理由があります。
Amie国際行政書士事務所では帰化申請のカウンセリングから申請書類作成、法務局への同伴などトータルでサポートしています。千葉や東京を中心に帰化申請のご依頼を多くいただいております。帰化申請をご検討中の方は是非ご相談ください。
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