入管法における身元保証人の責任について
2023,08,02
外国人が永住申請をするときや、日本人の配偶者等(実子の場合も)などの身分系申請をするときに、身元保証人を入管から求められます。
申請したい外国人の方から、身元保証人になってくれる人が見つからないというご相談をよくいただくので、入管法における身元保証人について、その責任の範囲などについてわかりやすく説明します。
English version of this article Responsibilities and scope of a guarantor
身元保証人になれるのは
申請する在留資格によっては、身元保証人は親族に限定されることもありますが、基本的には日本人か、外国人の場合は永住者・特別永住者になります。
就労ビザなどで滞在期間の決まった在留資格の人は保証人になることはできません。
身元保証人が見つけられない
日本人は「保証人」と聞くと、「連帯保証人」を思い浮かべる人が多いと思います。連帯保証人とは、例えばお金を借りた人(主債務者)が返済や支払いができない場合に、主債務者の代わりに支払責任を負う人です。主債務者が逃げてしまって、連帯保証人が代わりに借金を返すことになり大変な目にあった、という話は昔からよく聞くと思います。保証人にはそのイメージが強いために、知り合いの外国人に申請のための保証人になってほしいと頼まれても、抵抗感がある人が多いように思います。
また、永住申請については、保証人の納税証明書などの提出も必要だったため、その外国人に年収を知られたくない、また、外資系などではお互いの年収はデリケートな問題なので、そもそも外国人側からも頼みにくいという問題もありました。しかしながら、永住申請については2022年6月以降、身元保証人に求められる書類が簡素化され、現在は年収に係る書類の提出は不要になったので、永住申請時の身元保証人になってもらうハードルは下がったと考えます。
永住申請の保証人の書類が簡素化されます!No proofs of income required from the guarantors!
入管法の身元保証人の責任の範囲
入管法における身元保証人とは、「外国人が日本で安定的、かつ、継続的に入国目的を達成できるように、必要に応じて当該外国人の経済的保証及び法令の遵守等の生活指導を行う旨を法務大臣に約束する人」(入管のHPより)をいいます。身元保証人が保証する事項については、身元保証人に対する法的な強制力はありません。ただし、保証人が保証事項を履行しない場合、出入国在留管理局から約束の履行を指導されることはあります。つまり、身元保証人としての適格性を欠くとされるなど社会的信用は失いますが、法的責任はなく、いわば道義的責任が課されると言えます。
身元保証人が保証する事項
身元保証人が保証する事項は以下の通りです。(永住申請以外)
- 滞在費
- 帰国旅費
- 法令の遵守
先ほどご説明した通り、身元保証人には法的責任は課せられていないため、例えば帰国費用を外国人の代わりに負担させられるということではありません。
また永住申請の場合は以下の通りです。
- 法令を遵守
- 公的義務を適正に履行
これらを行うための必要な支援を保証することになります。
まとめ
入管法上の身元保証人は、いわゆる連帯保証人のような法的強制力のあるものではありません。そのことをご説明したことによって身元保証人になってもらえたケースがこれまでも多くあります。ただし、道義的責任はありますので、引き受ける際には責任の範囲を理解した上で身元保証人になっていただけたらと思います。
プロフィール
伊藤亜美
・東京都出身
・高校時代をイギリスで過ごし、現地校を卒業
・上智大学外国語学部英語学科で主に異文化コミュニケーションを学ぶ
・卒業後はメーカーの海外部門に11年間勤務
・高校生に英語を10年以上指導 TOEIC 970点 国連英検A級
・千葉県行政書士会・国際業務部担当理事
・金融庁の 「外国語対応可能な士業のリスト(行政書士)千葉県」 にも正式に登録されています。
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